「子どものため」のようで、経済界に影響されているだけの日本の教育
知ったかぶりでは許されない「学校のリアル」 第8回
◆「グローバル化」を掲げる教育、しかしそれは子どものためか?
「提言」は、脱ゆとり教育の学習指導要領の方針をさらに推し進めることを求め、そして「グローバル人材」という明確な目標を示していることになる。学習指導要領は10年ごとに改訂されているが、「提言」は、その10年後を睨んでいたといえる。
そして2017年3月、2020年度から小学校で、2021年度から中学校で全面実施される新学習指導要領が公示された。その小学校の新学習指導要領の「第1章 総説」には「改定の経緯」として、次のように記されている。
「グローバル化の進展や絶え間ない技術革新等により、社会構造や雇用環境は大きく、また急速に変化しており、予測が困難な時代となっている」
社会構造や雇用環境の変化の原因の第一に、「グローバル化」を掲げている。「グローバル化に対応しないと仕事に就けませんよ」と言っているのだ。「提言」の問題意識を、そのまま踏襲しているにすぎない。
今回の学習指導要領改訂へ向けて表向きの動きは、2014年11月に文部科学大臣から中央教育審議会への諮問から始まっている。それを前に経団連は、2013年6月13日に「世界を舞台に活躍できる人づくりのために」という提言を行っている。
その「はじめに」には、「国際ビジネスの現場で活躍できるグローバル人材の必要性が高まり」とし、「グローバル人材の育成は、大学教育のみで実現するものではなく、初等中等教育や、大学卒業後の企業における社内教育の果たす役割も大きい」としている。先の「提言」で示したグローバル人材育成の念押しであり、それを初等中等教育、つまり小学校や中学校でも実行するように求めているわけだ。それが新学習指導要領に反映され、小学校において英語が教科化されるのをはじめとする英語の強化、つまり小学校からのグローバル人材教育の育成が始まる。
教育が、教育界・産業界の意向に左右されている。子どものことを考えているようでいて、実は、先の「提言」の要求に応じているにすぎない。
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